企む職員室。[studioあおブログ]

企みつつ、教育しています。

『いじめRPG』あとがき 左子光晴

2019年1月27日(日)に始動した、小説連載プロジェクト「ゆげノイズ」。
読んでいて自然とゆげがたつような、読んでいる人にノイズが走るような、そんな作品を届けようという意味を持っています。
そんな小説連載第一弾は、『いじめRPG』!
実はこの作品、「EXODUS」という出版に特化したクラウドファンディングのプラットフォームで採用され、書籍出版に向けて動き出しているんです!(すごい!)

exodus.jp


そんな小説の作家さんによるあとがきを、どこよりも誰よりも早くお届け。
『いじめRPG』作者 左子さんによるあとがきをどうぞ!!

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一言で言うと、自信レベルを上げていじめをクリアしよう、という小説です。
たしかにそこにある問題なのに、なんとなく解決策が提示されていないこの「いじめ」という問題を、いざ解いてやろうと。
そう思いながら夢中で書き上げました。
「自信」については目がちかちかするほどに本編に書き込んでいるので、このあとがきではもう書きません。
それよりも最近気になることがありまして。

ものの本によると、世の中のほとんどのことは、もう「運」みたいですね。
運次第でうまく転んだり、悪くなったり。
あたしはこの1年とても運がよかったのです。それはもうとてつもなく。

「小説を書くので仕事を辞めます」と高らかに宣言したあたしは、1年前に会社を辞めました。2018年の1月です。
そこから2か月間、脳幹がとろけるほどに甘美で怠惰な日々を過ごしたあたしは、結局2週間でこの作品を書き上げたのでした。
なんとか滑り込みで賞に応募するも、これがまた箸にも棒にも引っかからず。
さてこれからどうすっか、と思った矢先に憧れの劇団に入り、書き物の仕事もぽこぽこもらって、作家としてご飯を食べられるようになりました。
テレビ番組をつくり、映画を撮り、銭湯に行ってやりたいことを話し合って。
そうこうしている内に、書き上げたものの埃をかぶっていたこの小説をブログに掲載してもらえることになりました。
そういえば、なんだかんだでこの小説を出版できそうで。

さて、こんな日々が来ることを、当時いじめられていた小4のあたしは想像していたかと言うと、勿論そんなわけはなく。

当時のあたしはと言うと、死ぬか生きるかさあどうする、という二択に迫られていました。
あたしには選択肢がない、とそう思っていたのです。
そこそこ勉強ができて、そこそこに明るくて、きっと親にとって自分は自慢の子どもだという自負。
その自負がぼくの選択肢を狭めていました。
恥ずかしいんですよ、いじめられることって。
うしろめたいし、隠したいし。
でも結局、なにかしらのアクションを起こさないと、何も解決ってしないんです。

結局あたしは、授業中に無言で帰宅するという、エクストリーム下校をしました。
学校では生徒が授業中に消えたとざわざわし、すぐに家に電話がかかって来て。
あたしは泣きながら母親にすべてを話し、駆け付けた学校の先生にすべてを話しましたとさ。
次の日からは嘘みたいな台風一過で、いじめはきれいさっぱりなくなっていました。

これね、いじめがすっと終わったのって運がよかったと思うんです。
事象だけを見ると、「エクストリーム下校」というアクションの結果としていじめが止まった、っていうだけなんですけど。
でもこれだけじゃないと思うんですよね。
きっとですけど、授業をわりと真摯に受けていたり、クラス委員みたいなことをやってたり、なにかそういう行動が蓄積されてて
学校の先生的にこの子はちゃんと助けないとな、って思ったんじゃないかと思います。

要するに、運って「自分すら忘れてしまった行動による結果」なんだなと。
人事を尽くして天命を待つ、という言葉がありますが「忘れ去った頃に人事の伏線が回収されること」を運がいいと言うんだなって。

こうして小説を連載できてみなさんに読んでもらえてるのも、(株)COLEYOと関係性をつくり、議論を重ね、お酒を飲み、という細々した行動が回収されたから。
映画撮れたのも、映画つくりたいと周りに言い続け、アイデアをノートに書き連ね、最終的に友達ひとりを誘ったことからスタートして。
なんかいろんなことが連綿と繋がっているんです。
そう思うと、運ってのはやはり行動する人に微笑むものなんだなって。
腐ることなく行動していたら、なんとかなるんだなって。

きみの選択肢は、本当はたくさんある。
答えがわからなくてもいいから、とりあえず何か行動をしてみてほしい。
きっと運よく何かが起こるから。

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左子さんのつぶやき記事もこちらからどうぞ☟

stud-io.hatenablog.com

f:id:stud-io:20190217150834p:plain



studioあお初・生徒のスタッフ化!?~投資システム「Pitch3」 先輩から後輩へ~

studioあおにて、生徒がスタッフ化するという初めての光景が広がっています!!

f:id:stud-io:20190416203026j:plain「なんでそれが必要なの?」
100人おいしいプロジェクトで、Pitch3を使っている中1料理人。
先輩から後輩へ、Pitch3の成功方法を伝授しています。

 

f:id:stud-io:20190416203033j:plain「やだ~見ないで~」
ちゃんと書ききるまで、スタッフには見せてくれないルーキー枠(小3)の彼女。
(見たいんですけども……かわいさにやられました)

「Pitch3」とは、studioあおの投資システムのこと。
生徒が進めるプロジェクトにお金が必要な場合、投資を受けることができます。f:id:stud-io:20190416214127j:plainこれは、以前このシステムで投資を受けた生徒のPitchシート。
シートに必要事項を記入して、このシートをもとにしたプレゼンが認められたときのみ、投資が受けられる仕組みになっています。


f:id:stud-io:20190416203056j:plain「何読んでるの~?」
休憩中も仲良しな先輩後輩。

f:id:stud-io:20190416203111j:plain「ここはこうやんか」「うーん……」
ふたりで一緒に考えて、プレゼンができる段階までもっていきます。

f:id:stud-io:20190416203122j:plain「こんなプロジェクトをやろうと思ってて……」
シートの記入が終わり、プロジェクトの目的から概要、必要経費まで取締役・のっしーにプレゼンします。

f:id:stud-io:20190416203129j:plainちょっと緊張してる、かな?
プレゼンの結果はどうだったのでしょうか。

f:id:stud-io:20190416203140j:plain結果が出る前に、Pitch3先輩とスタッフで指導方法を改めて確認している様子が。
以前はスタッフからPitch3のやり方やプレゼン方法を教わっていた彼が、今度はスタッフ側の立場となってわかりやすく説明しようと努力しています。教室初のこの光景に、感動の嵐です。

 

f:id:stud-io:20190416203146j:plain結果は、「惜しいね。」
プレゼン後すぐに、どこを改善すべきか、何の情報をそろえたらこのプロジェクトを認めさせることができるのか、先輩後輩で話し合っていました。
1回目のプレゼンで認められることはほとんどなく、トライアンドエラーの繰り返しで、漠然としていたプロジェクトの姿を明確に削り出していきます。

「次は絶対プレゼン通すぞ~!」
意気込んでいたふたりの行く末はいかに!?
次回の報告をお楽しみに!

『いじめRPG』最終章 あまり行かない喫茶店で 左子光晴

あまり行かない喫茶店

 冬休みに入った。僕は友達との約束も入れず、かと言って何をするわけでもなく、毎日家でだらだらと過ごしていた。
 いじめも解決した。友達もできた。一晩山で過ごしたり、女の子とも遊んだり、高校生らしい高校生になったはずなのに。あの時山中さんに言われた「なんか無理してるって感じ?」という言葉が胸につっかえる。ずっと望んでいた線路に乗ったはずなのに、地下鉄の暗いトンネルをずっと進んでいるような感じがしていた。

 あっという間に大晦日がやってきて、だらだらテレビを見ていると知らないうちに新年を迎えてしまった。除夜の鐘をぼーっと聞きながらこたつにうずくまる。スマホがヴッーと震えて、内村から「あけおめことよろ」という呪文のようなメッセージが送られてきた。あの日、グループLINEというものを内村がつくり、そこで初めてLINEを始めたのだが未だに使い方はよくわらない。内村の投稿を皮切りにめいめいが呪文やスタンプを送ってくるので、僕も呪文を打ち込んだ。こうやってみんな、誰かと繋がっていることを確かめるんだ。
 「神社でも行かない?」
 母さんは僕の同意を求める前にコートを着込み、マフラーをまいてスタンバイしていた。
 「行かない?じゃなくて、行きたい!でしょ。」
 「新年早々そんな意地悪言ってないで早く用意して!甘酒飲みにいこ!」
 「はいはい。すぐ用意するからちょっと待って。」

 神社はこんな夜中なのに、昼の食堂よりも混雑していた。
 「ちょっと!腕組もうとしないでよ!」
 「いいじゃない!迷子になったら危ないでしょ!」
 「だから、僕もう16だよ?いつまでもその、子ども扱いするのやめてよ。」
 「あら思春期かしら?こわいこわい。」
 あのいじめ解決の日以来、僕と母さんはすごく仲が良い。なんて言うか距離が近くなった。
 いじめという“やましいこと”が無くなったからかもしれないが、僕は母さんになんでも話をするようになった。母さんも母さんで、今まで聞いたこともなかった昔の話や仕事の話もしてくるようになった。
 「あそこに甘酒売ってるわね。」
 「ちょっと人多いよ。もう帰ろうよ。」
 「何言ってんの?甘酒飲めるまで帰らないわよ!」
 「言っとくけど、僕そんなに甘酒好きじゃないからね?」
 「え?そうなの?甘酒愛好キャラだと思ってた。」
 「誰が甘酒愛好キャラや!飲んでるとこ見たことないでしょ?」
 「明けましておめでとう!今年もよろしくね!」
 「ん?」
 振り返ると、にこっと笑ったミチロウさんと、鬼の形相のすけねえさんがいた。あぁ…気まずい…
 「ミチロウさん…どうしてここに?」
 「すけちゃんが神社行こうって言うからさ。」
 「え?二人付き合ってるんですか?」
 「おい川村。変な詮索入れてんじゃねえぞ。おめーは黙って書籍の加筆分書きゃいいんだよ!」
 「ごめんね、いつも通りかなり酔ってて。」
 「そんなことになってたなんて…全然知らなかったです!」
 「最近川村くん来てくれないから寂しかったよ。今新しいこと始めててさ、ちょっと川村くんにも手伝ってほしいんだよね。」
 「俊樹この方は?」
 「猿タコスのマスターのミチロウさんと、雑誌でお世話になってる編集者のすけねえさん。」
 「え?ミチロウくんってあのミチロウくん?」
 「バレちゃったかー!久しぶりだね久美ちゃん!」
 「え…えぇ?母さんどういうこと?」
 「ミチロウくんから聞いてないの?父さんの親友よ!」
 「そ、そうなんですか?」
 「実は川村くんが初めて猿タコスに来たときにぴーんと来てたんだ。たしかこれくらいの年の子どもいたよなって。名前もかわむらとしきだし、ひょっとしてと思って…川村くんの書いた本を読んだ時に確信したんだ。」
 「どうして教えてくれなかったんですか?」
 「あいつとの約束があったからさ。そうだ、今から猿タコスこない?甘酒はないけどコーヒーなら出せるよ。」

 正月は夜間も電車が動いているので、僕たち4人は猿タコスに向かった。母さんはずっとミチロウさんと思い出話をしていて、すけねえさんは缶ビール片手にずっと僕を責め続けた。
 猿タコスについたのは2時頃で、泥酔するすけねえさんをソファに寝かせて僕と母さんはカウンターに座った。ミチロウさんはタバコを吸いながら、3人分のコーヒーを淹れてくれた。
 「まさかミチロウくんが俊樹の恩人だったとはね。親子2代でお世話になるとは…」
 「そんなに父さんと仲良かったんですか?」
 「あいつとは高校からの友達でさ。本もタバコも音楽も映画も全部あいつに教えた。」
 「あ!そう言えば同じタバコだ!」
 「川村くんもあの喫茶店よく行ったでしょ?あそこ教えたのボク。」
 「そうなんですか?」
 「あそこのコーヒーが大好きでさ。今日は何しましょのマスターいるじゃん?あの人にコーヒーの淹れ方教えてもらってさ、うちでも同じ豆使ってるんだ。」
 「だから懐かしい味がするんだ!あそこと同じだったのか。なんかいろんな疑問が繋がってきました。」
 「ミチロウくんうちにもよく来てたよね!」
 「うちって?」
 「古本屋よ。あたしが働いてたときに父さんとミチロウくんがよく来ては100円コーナーでずっとうんうん唸ってるのよ。よっぽどお金がないんだなーって思ってた。」
 「お金貯めては海外行って全部使ってたからね。あいつはただバイトしなさ過ぎて金がないだけだったけど。」
 「え?じゃあ小説書かない父さんに怒ったのもミチロウさんですか?」
 「久美ちゃんにフラれても書かなかったからさすがに怒ったよ。実は久美ちゃんのこと好きだったからね!」
 「そうだったの?うわーミチロウくんにしとけばよかった!」
 「ちょっと母さん!」
 「冗談よ冗談。でもこんな形で再開するとはね。3年ぶり?」
 「そうだね。入院見舞いにいった時かな?」
 「お見舞いに来てくれたんですか?」
 「うん…驚いたよ。まさかあんなに早く逝っちゃうとはね…」
 
 なんとなく気まずい空気になってしまった。僕は何か話題を変えようと思い、さっきの神社での会話を思い出した。
 「そう言えば新しいことを始めたって、何してるんですか?」
 「あ、そうそう。実はいじめRPGを誰でも使えるようにしようと思ってさ!」
 「どういうことですか?」
 「試しに川村くんでやってみたんだけど、いじめを見事に解決できたからさ。これを誰でも使える形に整えれば、たくさんのいじめられっ子を救えるんじゃないかと思って。」
 「あれって僕が第一号だったんですね!あの、今さらなんですけどあれなんでRPGにしようと思ったんですか?」
 「やっと聞いてくれたね。いじめRPGの最大の目的は、いじめのイメージを変えることなんだ。
 「イメージですか?」
 「いつか川村くんが、実体以上の虚像と戦っていたのかもしれませんって言ったの覚えてる?」
 「覚えてます。確か伝説の装備を集めてる時ですよね。」
 「それが狙いだったんだ。いじめって、実体以上に大きく捉えられている気がしてた。いじめられる人間は世間で「ダメな人間」というレッテルを貼られる。なぜならいじめが解決できない難事件で、そんなとんでもない事件に巻き込まれるのはダメな人間だからって考えたほうが楽だから。
 「まさにそうです。いじめられている自分は底辺だって思ってました…」
 「だけど本当はそうじゃない。いじめの構造ってたぶんすごくシンプルで、人それぞれが違う個性を持っているという前提を無視し、たまたま目立つ差異を持った人間をつるし上げるゲームなんだ。つまり何が言いたいかっていうと、いじめは解決できるシンプルな問題だってこと。だけどみんなはそのシンプルな問題を難しく考えようとする。そこで実体以上にイメージが膨らんで手がつけられなくなる。いじめを解決する方法はあるんだよ。
 「なるほど…ちなみにいじめを解決する方法って?」
 「大きく分けると2つあって、1.その差異に負けない個性をプラスに見せて自信を持つ。2.その差異を縮めて同化し自信を持つ。川村くんで言うと「作家プライド」は1.で、「おで好青年」と「エアーリーディング」が2.ってとこだね。」
 「差異を縮めて同化か…」
 「実体以上に膨らんだ虚像を元のサイズに戻すためにも、イメージを変えるという戦略が正しいと思った。そこでいじめRPGっていうポップなものにしたわけ。これにはもう一つ良いことがあって、いじめに悩むメインを小中高生と仮定したときに、彼らにも刺さりやすいなと思ったんだ。」
 「だけど僕はゲームをしていなかったからRPGにしっくりきていなかったと…」
 「いや、まさかだったよ…本をずっと読んでるとはあいつから聞いてたけど、こんなにも偏った子だとは思わなかった…」
 
 「ごめん。何言ってるか全然わからない。」
 母さんは置いてけぼりにされて、少し拗ねているようだった。
 「川村くんはすごいよって話!」
 「そうなの?」
 「母さん全然違うよ…ミチロウさんはほんとにすごいです。ずっと誰かを気持ちよくするために考えてる。だけど僕は何もできてないんです…」
 「今回のはね、川村くんの影響なんだ。」
 「僕ですか?」
 「この前レコーダーを聞かせてくれたでしょ。あの時に川村くんが、今生きている人のために何かできる人間になりたい、と言ってたんだ。ボクはあれにものすごく感動した。ボクにできるのはせいぜいうちに来てくれるお客さんを喜ばせることくらいだと思い込んでいた。だけどそうじゃない。今生きている、もっとたくさんの人を良い方向に導いてあげたい。そう思ったんだ。」
 「無意識に言ってた…」
 「いや、川村くんはそれができるから言えたんだ。」
 「僕にはそんなこと…」
 「きみには本がある。きみはあいつに向けて本を書いてたって言ってたけど、その本を読んでボクも面白いと思った。不思議じゃないか?きみが一人に向けて書いた本がたくさんの人を喜ばせるんだ。」
 たしかにそうだ…母さんに向けて書いたコラムが雑誌で好評なのもそういうことだ…
 「ずっと本を書いてほしいって川村くんにお願いしたのは僕の願いでもあり、あいつの願いでもあるんだよ。」
 「父さんの?」
 「きみの父さんと病室で約束したんだ。もしおれが死んだら息子を良い方向に導いてほしいと。きみの父さんは言ってたよ。あいつはおれと違って本を書く才能がある。本で人を喜ばせる才能があるって。だからあいつに本を書かせてほしいって。」
 ずっと黙っていた母さんは、ぽとぽととカウンターに涙を落としていた。
 「あいつとの約束を守るために、きみをいじめから助けたいと思った。そして本をずっと書いてほしいと願った。」
 「…僕は、僕は今どうすればいいのかわからないんです…ずっと友達がいなくていじめられっ子だった僕に、最近初めて友達ができました。友達なんていらないと思ってたけど、僕はそれがすごく嬉しかったんです。だけど…本を書いてると変わってる人間として見られることを知りました。」
 「なるほど。それで?」
 「だから僕は普通になることを望みました。みんな普通が好きなんです。僕は本を書くことを辞めて、普通にカラオケに行ったり、普通に服を買いに行って、普通に彼女がほしい自分を演じました。」
 「つまり差異を縮めて同化していったわけだ。」
 「だけどある女の子に言われたんです。無理してるように見えるって。僕はどうしたらいいのかわからなくなりました。本は書きたい。だけど友達は失いたくない。だから変わってると思われたくなくて普通を演じる。だけどそれを無理していると言われる…」
 「友達ってなんだと思う?」
 「友達ですか?それは…」
 あれ?この会話…どこかでした覚えがある。
 「本当の友達ってさ、どんな状態でも見捨てず、自分を肯定し続けてくれる存在だと思うんだ。」
 父さんだ。昔、父さんが話してくれたんだ。

 「おい川村。」
 泥酔していたすけねえさんがゆっくりと身体を起こした。
 「上辺だけの友達をぽこぽこ増やしてなんになるんだ。お前が自分のやりたいことをやったときに、お前を否定するやつは必要か?少なくともあたしとミチロウはあんたの友達なんだよ。宇野やカマキリやオシャなんたらもそうなんだよ。お前がやりたいことをやるならいくらでも肯定してやる。間違った方向に進もうとしたら全力でぶっ飛ばしてやる。違うか?」
 「オシャねえさん…」
 「お前には本を書く才能がある。だから書き続けろ。それからな、そいつらと腹割って話せ。そんなつまらん理由で普通になろうとするな!お前の才能に惚れたあたしがかわいそうだろうが!」
 オシャねえさんはなぜか号泣し始めた。母さんは隣で静かに泣いている。なんだこの状況。
 あぁ、なんかもうどうでもいいや。でもそれは投げやりなものではなかった。頭は妙にすっきりしていて、自分がするべきことがやっとわかった気がした。僕はスマホを取り出し、内村に「おれ本書くよ。普通じゃないかもしれないけど、やっぱり作家になりたい。」と送った。
 僕はミチロウさんにお礼を言い、母さんを連れて早朝の青みがかった駅までの道を黙々と歩いた。ポケットがヴッーと震えたので、内村からかなと思いスマホを取り出すと、「がんばれ。応援する。」と山中さんからメッセージが来た。慌てて自分のメッセージを見ると、間違ってグループLINEに送っていたらしい。新年早々…うぅ…
 電車の窓からは初日の出が見えた。山頂で見た夕焼けよりもきれいで、目がちくちくした。

 今日から新学期だ。僕は連日の執筆に追われ寝不足で朝を迎えた。あのクリスマス以来みんなには会っていない。つまりあのLINE以来誰にも会っていないということだ。なんて言われるだろう…やっぱり変わってるって言われるのだろうか。不安な気持ちをため息に混ぜ込み、階段を登る息切れと中和させて教室に向かった。
 「川村!読んだよ!これっておれのことか?」内村が興奮しながら雑誌を見せてきた。僕のコラムだ。
 「お母さんが川村の名前をたまたま見つけてさ。お前すげえじゃん!雑誌に載ってるのかよ!」
 内村の持ってきた雑誌は瞬く間にクラス中にまわり、山口と大原は誇張された悪役っぷりにぶーぶー不満を言っていたが、次の作品にもおれを出せと図々しくも言ってきたのでまぁ喜んでるんだろう。山中さんは直接話しには来ずに、「やっぱり川村くんはそっちのほうがいい。」とLINEを送ってきた。
 次の日には、コラム連載分のすべてのバックナンバーが教室中にまわされた。内村が古本屋をまわってせっせこ買い集めたらしく、まるで自分が書いたかのように振舞っていた。まったく愛らしい馬鹿だ。
 僕は小学校以来の川村バブルを経験していて、あの時と同じようにサインを求められた。やっぱりそんなもの用意していなかったので、全員のノートに「川村俊樹」と書き、先生の混乱を招く事件を起こした。1月の末に連載が終わると、川村バブルはいったん収束を迎えた。だけどその頃には書籍化のための加筆も終わっていたので、これが発売される頃にはまた同じような事件が起こるだろう。いよいよサインを考えなきゃいけないなと思っていたら、内村が10パターンほど考えていた。ほとほと愛想が尽きるほどの馬鹿だ。

 僕がくよくよ悩んでいたことは、結局杞憂に終わった。それどころか作家と言うポジションを築き、僕を肯定してくれる友達ができた。決断したから今があるんだ。森川先生は今頃何をしているのだろうか。僕は信じた道を少しずつ歩いている。先生も新しい道を少しずつよれよれのジャージ姿で歩いているんだろう。

 「久しぶりだね。川村くん元気してた?」
 「はい。ミチロウさんも変わらずですね。」
 「しかしわざわざここを選ぶってことは、そういうことかい?」
 「はい。ミチロウさんのために書きました。」
 「楽しみだな。マスター!」
 「今日は何しましょ。」
 「いつもので。」
 「僕もいつもので。」
 「はいはい。」
 「ふふふ。変わらないですね。」
 「ボクが学生の頃からずっとあれだからね。」
 「父さんも言ってました。じゃあこれ、読んでください。」
 「ありがとう。あ、タバコ吸っていい?」
 「どうぞ!あ、でもその前に一つだけ報告が。」
 「なになに?」
 「彼女ができました。」

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4か月の成長はいかに!?生徒たちのプロジェクト報告会、開催しました!②

3/31(日)に行った、プロジェクト報告会。
①では、前半の部にプレゼンをした生徒たちをご紹介しました。

stud-io.hatenablog.com

 今回は、後半の部と交流会の様子をご紹介します!

後半トップバッターは、徳川方20万軍勢の侵略をもしのいだとされる、「難攻不落の大阪城を攻略せよ!」という研究をしている彼。f:id:stud-io:20190408084128j:plain実際に大阪城見学に行ったり、「火攻め」や「兵糧攻め」などの攻め方を調査したりして、どうすれば大阪城を攻略できるかを研究しました。彼の研究によれば、大阪城は倒せる!らしいのです。(あおのみんなで倒しに行きたい)
前回は、卵殻外培養(鶏の有精卵を、殻を割った状態で透明のカップの中で孵化させる)実験をして成果報告をした彼。
生き物からお城まで、その興味の幅がとても広いことがうかがえるプレゼンとなりました。

こちらは、「音声以外のコミュニケーションの可能性」というテーマでLINEアニメーションスタンプを作ったクリエイターのお話。
一からすべて自分でつくり上げた彼のスタンプは、現在販売の申請中です。f:id:stud-io:20190405194551j:plain彼のプレゼンは、Pepperをプログラミングして説明してもらうという工夫がなされていました。さすがクリエイターというべき!?アイデアを生み出す能力がすさまじい……!

こちらは、「韓国をみんなに好きになってもらうには?」という時事性の高い研究をしている中学生の女の子。f:id:stud-io:20190408090320j:plain日本人が持つ韓国に対する印象を年齢別に比較したり、韓国が持つ魅力を紹介したり。これからは韓国料理の分野で、日本人(特に高齢者)にアプローチすることで韓国への印象を変えていく、というところまで考えています。

f:id:stud-io:20190408090741j:plainこちらはプレゼン後の投票の様子ですが、「社会への貢献度」が圧倒的に高い彼女の研究。この項目で多くの票を集めていました。

そしてプレゼンの部最後の発表は……
「世界最強の毒イソギンチャク研究」の彼!!f:id:stud-io:20190408091247j:plain前回MVP(Most Valuable Project)受賞者の圧倒的存在感。f:id:stud-io:20190408091423j:plain(プレゼン前の風格がすごい。かっこいい。)
前回の発表から、さらに実験を重ねて成果を出しました。毎回違う素材を使って実験を続ける彼の探求心の強さには、非常に驚かされます。

プレゼンがすべて終了し、あとは結果発表を待つのみ。f:id:stud-io:20190408112924j:plainどきどき!

今回は、
・MEP(Most Evolutional Person)
・MVP(Most Valuable Project)
この2つの表彰があるのです!MEP賞は、スタッフひとりひとりが一番成長したと思う生徒に授与するという形をとりました。(以下一部抜粋~)

f:id:stud-io:20190408113441j:plain/やるやん、おめでとう!\

f:id:stud-io:20190408113532j:plain/こんなところがよかったと思ってます\

f:id:stud-io:20190408113633j:plain
/え、おれからのMEPほしくないの!?\

そんなこんなでわいわい進んだMEP授与式。
そして、会場にいる全員からの投票で決まった、MVPは……?
(ドラムローーーール。ダララララララララララ……)

f:id:stud-io:20190408114044j:plain
イソギンチャク研究~!総合的に評価が高く、見事2回連続でMVPを獲得しました!(おめでとう~!)
プロジェクト推進力や、黙々と自分の決めた作業に取り組み続ける力は、これから何に対しても発揮されていくと思います。新年度から高校生になる、彼のこれからの飛躍に期待!


プロジェクト報告会の後には、お互いに思ったことや感じたこと、これからの研究に生かせそうなことなどを共有できる場として、交流会も行いました。

f:id:stud-io:20190408114700j:plain
サンドウィッチを囲みながら、みんなでわいわい。

f:id:stud-io:20190408114743j:plain
「100人おいしいプロジェクト」を進める、ラーメン職人が作ったコーンポタージュラーメンをすすります。f:id:stud-io:20190408115105j:plain
作ったラーメンを食べてもらい、おいしいと言ってもらえたらチェキで記念撮影をする。今回で40名近くのおいしいが集まったそうです✨

f:id:stud-io:20190408115600j:plain展示型のプロジェクト*スタンディングデスクを見てもらったり、

f:id:stud-io:20190408115928j:plain展示型プロジェクト*マイクラMineCraft)の脱出ゲームで遊んだり。

f:id:stud-io:20190408115616j:plain
生徒同士、それぞれのプレゼンを評価する姿も見られました。

studioあおが目指す、「なめらかな教室」。子どもも大人も対等な立場で語り合い、当たり前に社会に触れることができるような空間が、自然とできていた時間だったのではないかと思っています。


次回のプロジェクト報告会は、3か月後。
新規生徒もぞくぞく加入しており、面白そうなプロジェクトがどんどん動き出しています。3か月後はどんな会になるのか、今からワクワクが止まりません~!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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*おまけ*f:id:stud-io:20190408120827j:plain実は、代表も最後にプレゼンしてました。
株式会社COLEYOってこんな会社で、これからどんな未来を作っていくか。
投票はなかったけれど、みんなはどう思っていたんだろう……?
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『いじめRPG』第11章 宴 左子光晴

 タンッ
 「おい止めんなや!ちょ、続きはよ!」
 「聞きたいですか?」
 「何もったいぶっとんねん!そのボタン押させろ!」
 「どうしようかな?」
 「川村くんはやくはやく!すげーいいとこなんだから!」
 「おい川村、早くしろ。あたしも暇じゃないのよ!」
 「川村っちはやくー!どうなったのよ?なんて言ったのよ?」
 宇野さんにオシャにいさん、すけねえさん、カマキリさん、そしてミチロウさん。パーティのみんなが僕を取り囲んでいた。みんな仕事を早めに切り上げて月曜の夜なのに集まってくれたらしい。ミチロウさんの粋なはからいだった。

 話し合いが終わったのは放課後で、母さんはピロティを抜けるとどっと老け込んだ。
 「あぁーーーつかれだぁーーーー」
 「…母さんありがとね。」
 「母親ですから!子どもに頼られるのが母の喜びですから!」
 「…しかしすごい剣幕だったね!山口黙れ!って。」
 「ちょっとそういうの言わないでよ!恥ずかしいでしょ。」
 「かっこよかったよ…なんて言うか、誇らしかった!これが僕の母さんなんだって。」
 「母さんだってやるときはやるのよ。」
 「もっと早くから頼るべきだったかな?」
 「それはどうだろうね。俊樹がああしてほしい、こうしてほしいってちゃんと指示してくれたから母さんはその通りにやっただけ。いじめられてるんだけどどうしよう?って感じで来てたら、母さんが学校に怒鳴り込んでそれで終わってたかもしれない。」
 「それはあるかもね。校長黙れ!って言ってたかもね。」
 「だからそれは言わないでって!」
 「あ、用務員のおじさんだ!」
 「川村くん!今終わったのかい?お母さんもお疲れ様でした。」
 「はい!あの…今日はありがとうございました。」
 「いやー、ほんとに素晴らしかった。鯛やヒラメが舞い踊ったねー。」
 「助けた亀にまんまと利用されましたね。」
 「そう言えば竜宮城って俊樹なに?」
 「それは内緒。」
 「しかし川村くんあれでよかったのかい?」
 「そうよ。母さんもびっくりしたわ!」
 「あれこそが正解。父さんも同じようにしてたと思う。」

 僕は制裁レベルを最後の最後まで決め兼ねていた。カマキリさんの言うように、たしかに山口たちや森川先生をこのまま放っておけば、またいじめの被害者が出るかもしれない。気が狂いそうなほどに憎くて疎ましくて、どうしようもない存在だ。だけど。だけど猿タコスに通い始めて、ミチロウさんと話す中で僕の中で何かが芽生え始めた。毎日いろんな人に出会い、いろんな人の話を聞いた。少しづつ、でも確実に僕の中でそれは育ち続けた。それは日に日に存在感を増していき、そしていつしか僕はそれを認識するようになった。

 「じゃあ続きいきますね。」
 
 スマホの再生ボタンを、僕は押した。

 「僕が言いたいのは…人間は変われるんです。だから僕は山口くんたち、そして先生たちを許します。」
 「…。」
 「え?川村くん今のは…本当かい?」
 「校長先生。僕はこの2週間でたくさんのことを学びました。それは学校では教えてくれないことでした。人生には意味がないこと。だけどどうせ生きるなら幸せに生きたほうがいいこと。自信が大事ということ。世界は広いということ。そして、人間は変われるということ。僕は変わりました。見た目も姿勢も変わりました。でもそれ以上に、考えが変わりました。」
 「…おい川村…なんだよ考えって?」
 「僕はきみのことをずっと馬鹿な人間だと思っていた。本も読んだことのない馬鹿な人間。」
 「なんだとコラ?」
 「馬鹿すぎるから僕を恐れていじめるんだって。だけどあの日、本をボロボロにされた日に思ったんだ。そんな馬鹿な人間にいじめられる僕は底辺なんじゃないかって。生きてる意味がないんじゃないかって。雨の中僕は自殺しようと決めたんだ。」
 「…。」
 「そんな僕に手を差し伸べてくれる人がいた。その人が言うんだ。川村くんはもったいない人だって。僕のことを面白いってその人は言うんだ。いじめられっ子で生きてる意味のない僕がだよ?それから僕は見ず知らずのその人と一緒にいじめを解決していくことになった。髪の毛を切ってもらったり、空気の読み方を教わったり、世の中には本よりも面白いものがあることを教えてもらった。ある人は僕に本を書く才能があるといって褒めてくれた。ある人はいじめの戦い方を教えてくれた。僕に自信をつけるためにみんなが力を貸してくれたんだ。そしたら何があったと思う?」
 「…なんだよ?」
 「明日のことを考えるようになったんだ。明日はこれをしよう、あれをしようって考える自分がいたんだ。そのときに思った。人間は変われるんだって。狭い世界に閉じこもって、死んだ人のことばかりを引きずってても仕方がないんだって。僕は今生きている人のために何かできる人間になりたい。僕に関わる人を気持ちよく、いい方向にしてあげたい。だから僕はきみを許す。」
 「偽善者かよ!」
 「山口くんも…山口もいつかわかると思う。人を踏みにじるよりも、人のために何かするってことのほうがずっと楽しいよ。だから過去のことは忘れて、これからもっと楽しくなる方法を考えていく。それが自信を持って生きていくために必要なことだから。」
 「…川村、先生が悪かった…本当に申し訳ない…決めたよ。おれ教師辞める。」
 「辞めるんですか?続ければいいじゃないですか?」
 「今のおれはもう教師に向かないんだ。川村に気づかされたよ。学生の頃はさ、生徒に寄り添えるグレイトティーチャーになりたいと思ってた。でも結婚して子どもができて、もう無難に生きることしかできなくなったんだ。やれ体罰だ、セクハラだ、いじめだって親たちがものすごい騒ぐだろ?学校も学校で、できるだけ問題を起こさないように、みたいな空気が流れてる。そしたらもう教育とか生徒のためとかどうでもよくて、面倒が起きないように最低限生徒に関わっておくのが一番賢いんじゃないかって思うようになった。だからもうだめだ。おれは教師じゃない。」
 「先生は最低のくず人間です。だけど今はちょっとだけかっこいいです。」
 「だろ?じゃあ教師ラストとして大胆なことやっちゃうよ?山口!大原!」
 パンッ。パンッ。
 「なにすんだよ!」
 「ちゃんと川村に謝れ!お前たちは今人間としてあまりにもださすぎる。」
 「あん?」
 「お前たちは過ちを犯した。川村はそんなお前を許すと言ってくれている。なのにお前たちは死ぬほどみみっちくてくだらないプライドのせいで、川村に謝罪もできないでいる。人間は失敗する生き物だ。だけど人間はそこからやり直すことができる。だからちゃんと謝れ。やり直すためにもちゃんと謝れ!そして今からどうすべきかを必死に考えろ。以上!」
 「…川村ごめん。」
 「悪かったよ。川村ごめんな。」
 「川村、山口も大原もこう言ってるんだ。許してもらえるか?」
 「校長先生、教頭先生。あなたちも変われますか?」
 「こ、校長…いかがですか?」
 「教頭先生!いつまでも私の顔色を伺うのは止めなさい!自分のことは自分で考えなさい!川村くん。長い教師生活できみのような生徒に会ったのは初めてです。私も校長職を降りて、いち教員からやり直します。目が覚めました。教育委員会には私から話すことをお約束します。」
 「わ、私は…私も…そうします。一からやり直します。」
 「俊樹はそれでいいのね?」
 「うん。これがいい。これがいいんだ。」
 パチ。パチ。パチ。パチパチパチパチパチパチッ
 「川村くんいいもの見せてもらったよ。最高の竜宮城だったよ。」

 タンッ
 「これで終わりか?」
 「はい。これで終わりです。」
 「たまげた…こんなドラマみたいな終わりあるんやな…」
 「カマ、なんだか涙が出てきたわ…」
 「今度はほんとに泣いてんじゃん!」
 「ミチロウうるさい!」
 「川村くんすげーよ!めちゃくちゃかっけーよ!やべーよ!」
 「やるじゃん川村。あ、そう言えばもう一個いいニュースがあった。」
 「なんですか?」
 「連載決まったよ。いじめコラム。」
 「ほんとですか?」
 「めちゃくちゃ大変だったんだからー。死ぬ気で書けよ!元いじめられっ子!」
みんながバシバシと僕の肩を叩いた。僕は何がなんだかわからなくて、みんなが盛り上がっているのをぽかんと見つめていた。宇野さんが「喜ばんかい!」と頭をはたいてきた衝撃で、祝福の主語が自分ということにようやく気づいた。「え?あ…え…やったーーーー!」そんな僕のリアクションを見て、みんなげらげら笑った。
 「ミチロウさん。あれ、お願いできますか?」
 「やっちゃうか!」
 パパパーンパンパッパーン。
 「勇者川村は、レベルが30になった。ラスボスを倒しいじめを解決した。コラムの連載を勝ち取った。」
 わぁーっと再び盛り上がった。みんながハイタッチを求めてくるが、慣れていないせいでタイミングがわからない。手が腕に当たったり、勢い余ってカマキリさんとハグしたり、なんともぎこちないものになってしまった。
 あぁほんとだ。父さんの言ったとおり。友達はいたほうが楽しいんだ。やっとわかったよ。
 宇野さんはベロベロに酔っ払ったすけねえさんに絡まれてひたすら一発芸を要求されていた。泣きモードに入ったカマキリさんはオシャにいさんにデロデロに甘えている。ミチロウさんはそれを見ながら、にこっと笑っていた。
 みんな楽しそうだな。ひとり感傷に浸っていると、タバコを吸い終えたミチロウさんが話しかけてきた。
 「川村くんおつかれさま。」
 「ミチロウさん。ほんとにありがとうございます!」
 「これでいじめ解決RPGは終了だね。あとのボーナスステージは川村くん自身でがんばるんだ。」
 「はい!」
 「覚えてる?いじめを解決したらボクのお願いを一つ聞くってやつ。」
 「もちろん!で、そのお願いってなんですか?」
 「本を書き続けてほしい。」
 「本…ですか?」
 「そう。」
 「それは…え?今まで通りにすればいいってことですか?」
 「そう。別に作家一本でこれからもやっていけとかそういうことじゃなくて…もし将来的に別の仕事に就いたとしても、ずっと本を書き続けてほしい。それが僕のお願い。」
 「はぁ…」
 「なんか変?」
 「いや…なんて言うか、もっとすごいお願いされると思ってたんで…そんなことでいいのかって…」
 「今の川村くんにとってはそんなことって思うかもしれないね。それでいい。とにかく僕は川村くんの本をずっと読みたいんだ。」
 「わかりました。じゃあ僕はずっと書き続けますね。」
 「ありがとう!話は以上です。」
 ミチロウさんは再びタバコを吸い始めた。そのまんまの意味なのか?何かもっと深い意味があるのか?僕にはよく理解できなかった。

 「おい川村、お前いじめっ子許したんはええけど、明日からどないして友達つくっていくねん?」
 すけねえさんの陵辱から逃れてきたウノさんが僕の隣に腰掛けた。
 「どないって…ここで身に付けた奥義「エアーリーディング」とかを使おうかなって。」
 「いやそれもええんやけどな、お前にぴったりの呪文を一個授けたろ。」
 「なんですか?」
 「呪文「ダレガヤ」。」
 「ダレガヤ?」
 「そう。例えば川村が、おいチビーっていじられたとする。ほなそんときに、誰がチビや!と返す。ただそれだけ。」
 「それだけで何がどうなるんですか?」
 「いじられた言葉を否定しながら笑いを取れる。たかがそれだけと思うかもしらんけどな、笑いは魔法や。どんだけ見た目がきしょくても、どんだけ貧乏でも笑いさえとれれば人を魅了できる。言われた単語を「誰が」と「や!」で挟むだけの簡単なことなんやけど、これは芸人でも使てるテクニックなんや。」
 「なるほど…」
 「ちょっと練習してみよか。」
 「またですか?」
 「おい、貧乏!」
 「ダ…ダレガビンボウヤ!」
 「お前はSiriか!もうちょうい普通にしゃべらんかい!」
 「やったことないですもん…」
 「ええから慣れろ!いくで!おい、貧乏!」
 「だ、だれが貧乏や!」
 「ええ感じやん、やるやん。でももっとスムーズにいこ。おい、貧乏!」
 「誰が貧乏や!」
 「おい、元いじめられっ子!」
 「誰が元いじめられっ子や!」
 「おい、売れへん芸人!」
 「誰が売れへん芸人や!」
 「おい、顔ブサイク!ってさっきからわしやないかい!貧乏で売れへん芸人ってわしやないかい!」
 「自分で言ったんじゃないですか!」
 「ノリツッコミやん!まぁ…今スベッたんは全部お前のせいやけどな。」
 「いや、僕悪くないでしょ。」
 「てきな!てきな会話ができるから。そしたら川村は間違いなく人気者になれる。まわりはたぶん元いじめられっ子のお前に気遣て、当たり障り無いこととか距離を置いた会話をしてくると思う。そんときは自分から仕掛けていけ。」
 「仕掛けていくったって…」
 「なんの脈絡もなく、「誰が元いじめられっ子や!」って言え。」
 「無理ですよ…」
 「ええか?これはチャンスや。元いじめられっ子のお前にしかでけへんツッコミでありボケなんや。他のやつらには真似でけへん本物だけに許される笑いなんや。せやから明日試してみ?」
 「…まぁ、チャンスがあれば…」
 「チャンスあればちゃうねん!笑いの天才を信じやんかい!」
 バシッと頭をはたかれたところで、酔いが回り赤鬼化したすけねえさんがやってきた。
 「おい宇野…うちの作家先生殴るってどういう了見だ?あぁん?死ぬか?」
 「ちょ、ちょいたんまっす!ツッコミですやん!川村のウィットに飛んだボケに対する、ぼくの愛あるツッコミですやん!」
 「寝言は永眠してから言えや。」
 また始まった。みんなやれー!やれー!とあおってる。こんなに愉快な夜は初めてだ。でも今日が終わりじゃない。明日からが、始まりなんだ。

 ステージ⑤魔王の城クリア
 ー自信レベルが30になった
 ーラスボスを倒しいじめを解決した
 ーコラムの連載を勝ち取った
 ー呪文「ダレガヤ」を覚えた

 僕はぼうけんのしょにセーブした。

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4か月の成長はいかに!?生徒たちのプロジェクト報告会、開催しました!①

2019年3月31日、studioあおにてプロジェクト報告会を開催しました!

生徒の親御さんや、外部から数名をお呼びし、前回(11月27日)行った発表会からいかに成長したか、現在どのようなプロジェクトを進め、結果を出しているのかを報告するための集まりです。

stud-io.hatenablog.com

 

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/ご参加ありがとうございまーす!!\

今回報告会に参加する人は、全員が審査員!!
みんなで互いに評価しあって、その場でフィードバックがもらえるようなシステムを導入しました。
評価の種類は、全部で5種類!
・問いのオリジナリティ
・社会への貢献度
・表現力(プレゼンスキル、展示品の見せ方)
・プロジェクト進み具合(やり切り力)
・投資(応援)したいか

これらの評価が一番高かった生徒が、今回のMVP(Most Valuable Project)となります。自分のプロジェクトは、そしてプレゼンはどんな評価を受けるのか、みんなドキドキです……!

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(こちらは、報告会が始まる時間よりも早く来て、プレゼンの最終練習する生徒たちの様子。ドキドキとワクワクがごちゃ混ぜになったような、そんな気分?)

トップバッターのおふたりは、「人が水中に浮かぶには?」という研究。
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前回の発表会以降も研究をつづけて、以前よりも踏み込んだ研究成果を報告してくれました。一番最初ですが、堂々としたプレゼンに拍手~👏


小4カメラマンによる、「写真の機能とこだわり」について。
「みんなが自分くらいの技術をすぐにでも習得できるように」という思いから、今回自分が身につけた技術や工夫をわかりやすくまとめてくれました。f:id:stud-io:20190405112418j:plain編集作業の一部を披露中……

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(たのしそう)(インスタ映えする撮り方教えてもらおっと)

e-sports大会、studioあおで開催!」というイベントの企画・運営をする、小4クリエイター。
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4月6日に開催するe-sports大会の宣伝も組み込まれていたのですが、プレゼン能力めっちゃ高い……(書いているわたしは用事があって参加できないのですが、とても行きたくなった……)


こちらは、「ゴキブリの好感度アップ研究」のおふたり。
なんでゴキブリはあんなに嫌われているの?という問いから、ゴキブリの特徴を洗い出す・アンケートで嫌われる理由などを調査して、ゴキブリに代わる「コキプリ」を生み出しました。f:id:stud-io:20190405194650j:plain
コキプリのビジュアルを考えて紙粘土で作成するところまで、すべて2人で行いました。(Gの濁音がなくなるだけで少し嫌悪感が薄れるのすごい……)

「あなたの1日を10万円で買う、と言われたらどうしますか?」
f:id:stud-io:20190405200202j:plainそんな言葉から始まった、中1哲学者のトークイベント。
『時間屋』という小説を書いた彼は、時間について自身の思索を深めるとともに、参加者にも「問い」を提示し、会場に思考の渦を作り上げていました。(これぞ巻き込み力!)

f:id:stud-io:20190405201033j:plain(「izure大賞」という、アプリでだれでも投票できる賞に応募しています)


と、ここまで報告会の前半でプレゼンした生徒のプロジェクトをご紹介してきました。
後半にプレゼンを行った生徒や交流会の様子は、②の記事でご紹介したいと思います!
お楽しみに~!!✨

『いじめRPG』第10章 魔王の城 左子光晴

魔王の城

 ステージ⑤魔王の城:伝説の装備を使ってラスボスに挑む
 →いじめ当事者、親、校長・教頭に事実を提示し、“いじめ“を倒す
 
 「母さん今日は遅くなりそうです。先に寝ててください。明日いろいろ話します。 俊樹」
 そうメールを打った。時計は21時を指していた。
 「川村っち、制裁レベルは決めた?」
 「いや、それがまだ…明日決めようと思ってます。」
 「そう。あ、あとX dayはどうする?あたしも行ったほうがいい?」
 「ありがとうございます。でも…僕と母さん二人で戦おうと思います。さんざんカマキリさんとミチロウさんにはお世話になったんですが、最後は家族で乗り切りたいなって。」
 「…大丈夫?」
 「…大丈夫かどうかは…だけど、何かいじめ解決以上の問題も解決しなきゃいけない気がしてるんです。」
 「どういうこと?」
 「…父さんは僕が中2の頃に亡くなりました。それからはずっと一人ぼっちでした。この世界に僕を必要としてくれる人は誰もいないんだって…だけどそれは間違いでした。ミチロウさんやカマキリさん。オシャにいさんやウノさんにすけねえさん。みんな僕の味方になってくれました。そして、母さんはずっと僕の味方だったことに気づきました。母さんは僕が話し出すことをただひたすらにじーっと待ってくれてたんです。」
 「そっか…」
 「父さんは死にました。でも僕と母さんは生きてる。これからも生きていくんです。なんかうまく言えないけど、死んだ父さんを悲しむんじゃ無くて今生きてる母さんを大切にしなきゃって。だからX dayは母さんと二人で戦いたいんです。」
 「川村っち…あたしなんだか泣けてきたわ…」
 「いや、カマキリ全然泣いてないじゃん。からからじゃん。」
 「泣いてるってことでいいでしょ!ミチロウちょっと黙りなさい。」
 みんなで笑った。青臭いセリフを吐いてるなって自覚はある。それがちょっと恥ずかしいなと思ったけど、遮ることなく、馬鹿にするでもなく、ただただ静かに聞いてくれる二人がいた。
 この二週間。一歩踏み出しては立ち止まり、後ろに下がりそうになることもあった。それでも前へ歩き続けた。たった一歩踏み出せば人生は変わるんだ。その一歩目は決して大きな歩幅ではない。ミチロウさんを信じるというただそれだけだった。自分の意思で猿タコスにやってくるという、わずか交通費160円の第一歩だった。

 「大丈夫そうね。うん。あとはうまくいくことを祈るのみだわ。」
 「そうですね。」
 「もしうまくいかなったらうちに…」
 「ミチロウさんありがとうございます。でも、もう逃げ道はつくりません。やるべきことをやるだけです。そしたらきっとうまくいきます。」
 「…そうだね。なんかボクより大人になっちゃったなー。」
 「ミチロウがガキなだけでしょ!」
 「ボクがガキだとしたら、草むらのカマキリを食べるきみは?」
 「餓鬼ってとこかしら。」
 「うまいこと言うねー。」
 「いいフリするじゃない!」
 「あ、あの…」
 「あ、ごめんごめん!じゃあ月曜は通常営業してるから、夜にでも寄ってよ。大宴会といこうじゃないか!」
 「楽しみにしてます!今日は…と言うかいつもありがとうございます!」
 「がんばってね!」
 「川村っちファイトよ!」

 終電から覗く空にはまん丸の月が輝いていた。

 9月24日 月曜日
 「全部持った?」
 「持ったよ!」
 「ハンカチとかティッシュは?大丈夫?」
 「いらないよ!」
 こんな母さんを見るのは初めてだ。なんていうか、浮き足立っている。
 昨日は二人で過ごした。三種の神器を見せてどんな被害に遭っているかを正直に話した。作戦も伝え、母さんにどう振舞ってほしいかもすべて説明した。母さんは動じることなく、怒りを見せることもなく、ただ淡々と話を聞いてくれた。頼もしかった。二人でもなんとかなると確信した。だけど…
 「母さんの服変じゃないかしら?お化粧濃い?」
 「いや、授業参観じゃないから!」
 大丈夫だろうか?不安になってきた…

 学校が近づくと母さんは落ち着き始め、逆に僕がそわそわし始めた。この土日ですべてがリセットされた気分だ。そんな僕を察してか、母さんは手を握ってきた。
 「何してんの?ちょっと、これは恥ずかしいよ…」
 「いいじゃない親子なんだから。」
 「とは言え変だよ。もう16だよ?」
 「そんなこと言うなら学校についていくのやめようかな?」
 「いやそれは…」
 なんとなく緊張が和らいだ気がした。

 学校に着いたのは12時だった。いじめの件で話がある、と母さんは今朝学校に電話をしてくれていた。なかなか校長に代わってもらえずかなりの長電話だったが、母さんは毅然とした態度を崩さなかった。どうやら向こうも折れたらしく、昼休みに関係者を集めて話し合うことになった。
 上履きはやっぱりなかったので、来訪者用のスリッパを履く。自分の学校なのに、なんだか初めて来る場所のような気がした。
 校長室に向かうと、部屋の前で校長と教頭、そして森川先生が立っていた。
 さぁいよいよだ。僕はスマホの録音ボタンをオンにした。

 「か、川村さん。今日はお忙しい中ご足労いただき誠にありがとうございます。また、こちらの対応が至らずこのような事態になってしまい誠に申し訳ありません。」
 「校長先生、教頭先生。お時間とっていただきありがとうございます。まず初めに、私は一方的にいじめの当事者を怒りにきたわけではありません。建設的な議論ができればと思っております。そのためにも、両者の言い分を正確に記録するために会話を録音させていただいてもよろしいでしょうか?」
 「…。」
 「校長先生いかがですか?あとで言った言ってないという問題にならないよう、お互いのために記録しておきたいのですが。」
 「…か、かしこまりました。問題ございません。」
 「ご理解いただきありがとうございます。」
 「で、ではここではあれなので、さぁどうぞ中へ。」
 ガチャリ…ドタドタドタッ…バタンッ
 「森川先生。お茶を用意していただけますか?」
 「か、かしこまりました!」
 「校長先生、森川先生お気遣いなく。」
 「あ、いえ…もう少ししましたら山口たちも来ますので…」
 ドタドタドタッ…ガチャリ…バタンッ
 「…。」
 キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン
 「…。」
 ガチャリ…ドタドタドタドタドタドタドタドタドタッ…バタンッ
 「さぁさ、みんなここに座って。森川先生はお茶をお配りしてください。」
 トンッ。トンッ。トンッ。トンッ。トンッ。トンッ。トンッ。トンッ。トンッ。トンッ。
 「川村俊樹の母の川村久美と申します。山口くん。大原くん。松本くん。寺田くん。内村くんね。貴重なお昼休みにお呼びたてしてごめんなさいね。」
 「別にー。」
 「じゃあ早速本題に入りましょうか。私は息子から、学校でいじめに遭っているという相談を受けました。今日の目的は、いじめが本当にあったのか、もしあった場合に誰がいじめたのか、そしてその当事者が見つかった場合に学校としてどう対処するのかを明らかにしたいと思います。」
 「初めに言っときますけど、おれら川村をいじめたりしてませんよー。」
 「ほんとなのか山口?」
 「おれらはいじってただけっすー。川村が嫌な思いしてるとか知らなかったすもん。」
 「あらそう。あくまで山口くんはいじってただけで、いじめてはいないと主張するということね。」
 「いじめなんてしませんよー。なぁかわむらー?」
 「…ぼ、僕は…いじめられてると思ってました。」
 「あ、あの、お母さん。これじゃあ埒があかないので、こちらで本人たちから聞き取り調査を行って日を改めるというのはいかがでしょうか?」
 「その必要はありません。校長先生これを見ていただけますでしょうか?」
 ジィーーーーーッ。バサッ。スーッ。パラパラパラッ。
 「なんですかこれは?」
 「息子の日記です。ここには山口くんたちからいじめを受けた具体的な被害と、それによって心や体調に変化があったことが書かれてあります。山口くんたちだけじゃなくて、森川先生や教頭先生にも問題を取り合ってもらえなかったことも書かれています。」
 「お、お言葉ですが、川村くんの書きようによってはなんとでも書けてしまうと言いますか…」
 「息子が嘘をついているということですか?」
 「いえ、そのようなことは申し上げていないのですが…でも日記というのは客観性に欠けるかと…」
 「なるほど。それは校長先生のおっしゃる通りかもしれませんね。ではこちらはどう説明されますか?」
 パサッ。バサッ。ドンッ。ドンッ。
 「写真と教科書です。見ていただけますか?」
 「これは…」
 「机の上に花瓶が置かれてありますね。しかも菊の花です。これがどういう意味かは、校長先生おわかりになりますよね?」
 「は…はぁ…」
 「わざわざこんなことを、いじめられているとでっちあげるために息子がすると思いますか?」
 「…あ、いえ…」
 「これは壊された自転車です。先ほど駐輪場を見てきましたが、たしかにボロボロになった自転車が置いてありました。この学校は自転車を止めていると破壊しなければならない校則があるのでしょうか?」
 「いえ…そのようなことは…」
 「まだあります。上履きが隠された下駄箱。それによって外靴で教室に入らなければいけなかった写真。そしてこっちが落書きされた教科書です。落書きってページの隅に書くもんですよね?わざわざ文字が読めなくなるようにマジックで書きますか?それも死ねとか、キモ蟲とかって言葉を自分で書きますかね?」
 「も、森川先生!これはご存知でしたか?」
 「あ、いや…あの…」
 「僕は森川先生に花瓶のこと相談しました。だけど森川先生はきれいな花を誰かが置いてくれたんじゃないかって答えました。」
 「そうなんですか?」
 「…。」
 「森川先生黙ってちゃわからないでしょ?」
 「…そ、相談された覚えはあります…ですがそのように答えた覚えは…」
 「あるんですか?ないんですか?はっきりしてください!管理職の責任にもなるんですよ!」
 「…覚えておりません…」
 「お、お母さん申し訳ありません。森川先生も覚えてらっしゃらないということで…もしそれが事実だとしたら大変な問題かと…」
 「事実だとしたらとおっしゃいましたか?まだ息子の言う事を信用なさらないつもりでしょうか?」
 「あ…いえ…」
 「いじめの事実はあります。それは間違いないですね?」
 「お…仰るとおりです…」
 「学校側として、川村俊樹がいじめに遭っていることを認めるということですね?」
 「は…はい…」
 「ありがとうございます。じゃあ次の問題は誰がやったのかを明らかにすることですね。」
 「おれたちじゃないっすよー。なぁ大原?」
 「え?あぁ…お、おれたちじゃないっす…誰かが置いたんじゃないすか?」
 「そうですか。山口くん、大原くん。今のは本当ですね?本当に置いてないんですね?」
 「なんか証拠でもあんすかー?おれらが花屋に行った証拠でもあんすかー?」
 「花屋に行った証拠はないわね。」
 「ないのに疑ってんすかー?あ、おれ傷ついちゃったなー。こういうの冤罪って言うんじゃないすかー?心のケアが必要になってきますよー?」
 「松本くん、寺田くん、内村くんはどう?何も知らない?」
 「いや、おれたちは…なぁ寺田?」
 「知らないっすね…」
 「…あ、あの…おれは…」
 「内村くん何?」
 「おいうちむらー。緊張してんのかー?おれたちは何もしてねーよなー?そうだろ?」
 「え、あ…うん…」
 「山口くん。内村くんに圧力をかけるのはやめてもらってもいいかしら?」
 「そんなことしてないっすよー。なぁうちむらー?」
 「そ、そうだね…」
 「あくまで山口くんたちはやってないということね?間違いないのね?」
 「うーす。知らねーっす。」
 「そうですか。できれば出さずに済ませたいなと思ったんだけど…校長先生。昼休みを過ぎてしまいますがよろしいですか?」
 「事が事ですので致し方ないかと…」
 「ありがとうございます。じゃあこちらを聞いてください。」
 カチッ
 「…お、おお…大原くん、や…ややめてよ。」
 「は?何をやめるって?」
 「ぼ、ぼぼぼくは、き、キモ蟲なんかじゃない。か、川村だ。そ、そう呼ぶのやめてよ大原くん。」
 「気持ち悪いしゃべりかたしてんじゃねえよ!」
 「そ、そそ…それに花瓶を置くのもやめてよ!」
 「わざわざ買ってきてやったんだぞ?気に入らねーなら花代と花瓶代よこせ!まぁ内村の金なんだけどな。」
 カチッ
 「大原くん。これはあなたの声で間違いないわね?」
 「ひ、ひひ卑怯だぞ川村!録音してるなんて聞いてねえぞ!」
 「いちいち大原くんの許可を取らなければいけないのかしら?」
 「それは…いや、だって!」
 「盗聴じゃないんすかー?勝手にこういうの録っていいんすかー?どうなんすかー?」
 「盗聴よ。」
 「じゃあいけないじゃないすかー?何堂々と言ってんすかー?おかしいんじゃないすかー?」
 「ふふふ…ははっははは。」
 「何笑ってんだよ?」
 「いや、盗聴って言葉は知ってるのに、その意味を全然知らないんだと思って。山口くん面白いわね。盗聴自体は違法じゃないのよ。今回のケースだと個人のプライバシーの侵害にも当たらないし盗聴目的も自己防衛だから問題ないようだけど。どうする?」
 「まぁおれは花瓶のことは知らないんで関係ないんすけどねー。」
 「おい山口!お前がおもしれーて言ったんだろ?」
 「おもしれーって言っただけで、やったのは大原だろー?」
 「ふざけんじゃねーぞ!裏切んのか山口!」
 「まぁまぁ仲間割れはしないでよ。山口くんは花瓶は知らないって言ってるけど、暴行はしたんだよね?」
 「は?知らねーすよ。」
 カチッ
 「と、とトイレに行って何するの?」
 「キモむしー。あんまり調子に乗るなよ?」
 「…い…いかない…何をされるか聞くまで、僕はここを動かない…」
 「そうかー。じゃあここでいいや。」
 ドスッ。
 「…い、痛いじゃないか山口くん。僕の右肩を殴るのはやめてくれよ。」
 「気安く名前呼んでんじゃねえぞコラ!ここで死ぬか黙ってトイレについてくるかどっちか選べ。」
 カチッ
 「暴行と脅迫かしら?」
 「た、たかがこの程度でいじめって言われてもー。こっちはじゃれてたつもりなんすからー。」
 「俊樹いける?」
 「…うん。」
 プチッ。プチッ。ガサガサッ。パサッ。
 「川村くん…そ、それは…」
 「山口くんと大原くんに暴行された痕です。日記にも書いてますが、先週の水曜日にやられました。」
 「山口くん、大原くんそうなのか?」
 「…し、知らないっすねー。」
 「…すいませんお待たせしました!入ってきてください!」
 ガチャリ…トタ…トタ…バタンッ
 「用務員の原です。私は山口くんと大原くんが暴行していたのをたしかに目撃しました。」
 「だーかーらー、あれはプロレスごっこですって?」
 「山口くん違うわ。たとえきみがプロレスごっこと理解していたとしても、これはもう立派な傷害よ。そして俊樹にはプロレスごっこをする意思はなかったわ。校長先生はどう思われますか?」
 「あ、いや…これはその生徒同士のじゃれ合いで…」
 「この傷を見てもまだそんなことが言えますかっ!どうなんですかっ?」
 「いや、あの…それは…」
 「真摯な対応をしていただけないようでしたら、警察に被害届を出そうと思いますがいかがでしょうか?」
 「そ、それは何卒…生徒たちにも動揺が走り、生徒たちがその…」
 「生徒じゃなくて校長先生の保身の問題ではないでしょうか?まぁそんなことはどうでもいいんです。とにかくいじめはあった。そしてその犯人は山口くんたち。これに異議のある方はこの場にいますか?」
 「…。」
 「…お、おれ…やりました…松本も寺田も…大原も山口もみんなやりました…誰も山口に逆らえなかったから…逆らったら次はおれがいじめられるから…」
 「内村!」
 「山口黙れ!内村くん話して。」
 「…お、大原が、大原がタバコ吸ってるところを川村に見られたところから始まったんです…川村はおとなしくて、ずっと一人で本を読んでて、とにかく静かなやつでした…最初はからかうつもりでやってたんですけど、川村がなにも反応しないから、どこまでやればいじめと気づくだろうって…だけどどんどんエスカレートして…先生も全然気づいてくれないし、でもいじめを止めればおれが次やられるし…おれそれで…」
 「内村くん。正直に話してくれてありがとうね。」
 「川村…ほんとにごめん、ごめんなさい。謝っても許してもらえないと思うけど…ほんとにごめんなさい!」
 「お…おれたちも山口と大原に逆らえなくて…ごめんなさい!」
 「…ご、ごめんなさい!」
 「松本くんも寺田くんも正直に謝ってくれてありがとう。だけどね、謝っても済まないことをあなたたちはしたのよ。たかが殴ったくらい、物を盗ったくらいと思ってるかもしれないけど、これは犯罪なの。あなたたちは犯罪者なのよ。」
 「ご…ごめんな…さい…」
 「ちょっと母さん!ここからは僕が話すよ。みんな顔を上げて。」
 「川村くん…その…彼らの処分は学校側で決めさせてもらえないかな?」
 「校長先生何言ってるんですか?あなたたちも処分を受ける側でしょ?僕は森川先生にいじめの報告をしました。先生はまったく相手にしてくれず、教頭、校長に報告してくれと言ってもなかなか動いてくれませんでした。教頭もいじめの調査を行うと言いながら遅々として進まず、校長にも報告せず。やりとり全部レコーダーに入ってます。そんな先生たちが、何を人ごとのように生徒の処分を決めようとしてるんですか?どの口が言ってるんですか?」
 「そ、それは…」
 「それはじゃないんです。生徒がいじめを訴えても取り合おうとしない。責任を押し付け合い、自分に都合の悪い事を隠す。僕は学校で何を学べばいいんですか?世の中の不条理ですか?うまい責任転嫁の方法ですか?」
 「申し訳ない…ほんとに申し訳ない…」
 「謝罪が聞きたいわけじゃないんです。学校の先生が忙しいことも、評価制度が悪いことも聞きました。だからと言って生徒を無下にするのは違うと思います。今僕は…僕は少し興奮してるかもしれませんが…一時的な怒りで話してるわけではありません。僕が言いたいのは…」
 「…。」
 「僕が言いたいのは…」

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